ハンカチを持つ
「〇〇ってどんな人だっけ?」って言う質問に対して答えるのは、
「ちょっと性格ひねくれてる人」とか「ほら、あの面白い人だよ」みたいな答え方ってあんまりしないと思う。
それよりは、「いつも鉄道の話してる人」とか「黒縁眼鏡で髪型がキリストみたいな人」とか「声やたら高くて煙草吸ってる人」みたいな表現が多いんじゃないかな。
つまり言いたいのは、人のアイデンティティって結局内面じゃなくて外見なんじゃないかってこと。
自分の持ち物や習慣がそのままその人を表してるというか。
コンバースを履き潰していたらフランクで肩の力抜けた感じがするし、
トイレのあとにさっとハンカチ出してたら几帳面なんだなって思うじゃん。
みんなも無意識にそういう観察ってしてると思うんだ。外見からその人柄を予測するってこと。
なんだかコナン・ドイルみたいな話だけどさ。
例えば自分が普段必ず持ち歩いている「アイデンティティ」を表象するものを3つ挙げてみてほしい。ただし、ケータイとか財布とか、生活する上で最低限のものは除くとして。
僕は「文庫本・辞書・手帳」だ。あ、全部本じゃん。馬鹿か。
「文庫本・フィルムカメラ・手帳」かなぁ。
この3つはないと駄目だ。ないと嫌な汗かく。中でも手帳がないと致命的。
「好奇心が旺盛で」「古いものが好き、思い出をつくるのに重きを置く懐古趣味みたいなところがあって」「雑なくせに自分のある部分はきちんとしとかないと落ち着かない」ってことなのかなぁと自分で分析してみたりする。
音楽で言えばホルモンとか聴くならはっちゃけてる感じなのかなとか、
Apogeeだったらこだわりがある人なのかなとか
サカナクションだったら流行に敏感でお洒落な感じとか、
当たらずとも遠からず、その人の身の回りがその人を表すっていうのはあると思うんだ。
だから意外と初対面でもその人の髪型、匂い、表情の動き、服装、靴、鞄、筆記用具を見ればその人がどんな人なのか、普段どんなことしてるのかっていうのは自ずと分かると思うんだ。
就活してる人、社会人の人はわかると思うけど、営業の仕事とか、面接に関わってる人ってそういう能力が死ぬほど高い。
僕の親父は一時期会社の面接官をやったりしていたそうだけど、「靴が汚ぇ」っていう理由だけで人を落としまくったりしたらしい。
だから僕はかなりだらしない人間だけど、革靴だけは磨いて綺麗にする努力をしている。だって靴が汚いってだけで「こいつ駄目じゃん」って勝手に思われたらむかつくじゃん。
もちろん身だしなみダメダメで仕事バリバリできたらそれはそれで恰好いいんだろうけどね。ギャップ効果だね。
実例を挙げれば、可愛い感じの女の子がスヌーピーの可愛い感じの手帳を使ってて、
そこに医学系実習やらテストやらレポートやらの予定がびっしり載ってて「うわぁかっけえ」って思ったことがある。
あるいは割と怖くて近づきがたい感じの人が使ってるiPhoneが実用的なアプリで埋まってるんだけど、よく見ると端にぷよぷよが入ってたりさ。
そういうギャップはいいよね。
まずは自分のことだらしないと思ってる人は、ハンカチを1枚持ち歩いてみたらどうだろう。ほんの少しずつ周りの見る目が変わっていくと思うし、
自分がハンカチを持つ事でトイレのあとに手をハンカチでふく習慣が生まれる。
そうやって外見のひとつひとつを検証してみると意外なほどに
自分のことがもっと分かったり他人のことが見抜けるようになるかもしれない。
少しずつ白髪が増えてきた。犬には持ち物がないから、「忘れ物」っていう概念もないんだろうな。