国際的シェアハウス、苦戦しています!
仕事を終えてシェアハウスに帰る。一人暮らし生活2日目。
ひとつ前の記事で紹介した通り、僕は今都内の木造シェアハウスで中国人・イギリス人と住んでいる。共有キッチン・台所・トイレ・洗面所・冷蔵庫と家具付きで家賃46000円という神物件だ。(ただし住宅はとてもボロい)
スパム焼いとる
一応二人には軽い挨拶はしてあるが、それ以上の会話はしたことがない。朝はお互いバタバタしているし、夜帰る時間はバラバラだからだ。
ところが今日帰るとキッチンから何か焼いている匂いがする。覗けばイギリス人(仮にここではボーンと呼ぶ)がフライパンで肉を焼いている。「おつかれー」と言ってみると「Hi,」と返ってきた。事前情報通り日本語はできない。
「What it is??」と訊いてみると「SPAAAAM!!」と言って笑う。フライパンの上で細切れのスパムが焼き鳥の砂肝のようになっている。酒のつまみを作っているに違いない。僕も負けずに今日はそこのスーパーで(今日開拓した)シベリアを買ったからな。やっぱり日本人はシベリアだよな。
「You wonder if Army,」(軍人かよ)くらいのニュアンスで言っておいてキッチンを後にした。言葉としてあってるかは知らぬ。話すことが大事なんだろう。
誰もトイレットペーパーセットしないの
それから共用トイレで用を足した。足元には散弾銃の薬莢のように大量のトイレットペーパーの芯が散乱している。数えると5つもあった。なぜ片付けないんだ!
ふと見ればトイレットペーパーホルダーにセットされているのも芯であった。使い切ったら普通補充しないか?僕は今「小」のほうだから実害は免れた。
5つのトイレットペーパーの芯を持って(あまりそういう機会は少ない)トイレを出るとトイレットペーパーのストックが置いてある。ここにあるならこまめにセットしたらいいのに。と思いながらそこから新しいトイレットペーパーを2つ取り、1つはホルダーにセットし、もう一つは予備のところにセットしておいた。
それからシャンプーと整髪料を買い損ねたことを思い出し、雨の中もう一度スーパーへ行きそれらを買った。ついでに調整豆乳の麦芽コーヒー(ばかうま)の1Lを買った。だから僕は今これを書きながら調整豆乳をがぶ飲みしている。
お湯沸かしとる
それでまた家に帰るとボーンの姿はなく、代わりに寝間着姿の中国人がいた。
お湯をわかして、それを待っている間単語ノートのようなものをめくっているようだ(彼女は日本語学校に通っている。今後彼女をリーと呼ぶ。)なんか、まだこの家に来て日が浅いけど、ボーンとリーって一切コミュニケーション取ってないよな...??片方が英語しか話せなくて、もう片方は広東語と軽い日本語なわけだから....。
「おつかれー」と声をかけるとリーは困ったような顔をして会釈をした。だよね。「おつかれー」なんてわかんないよね。英語だと「You must be tired.」的なニュアンスのもので、日本人はそれを挨拶として使うことでいたわるような意味になるのだよ....今度ものすごく暇な時があったら説明しようと思う。
僕は頭の中の言語ダイヤルを"Graded Speaker"(語彙制限)モードにセットした。
「こんばんは」と取り直して言うと「こんばんは」と返ってきた。
にこにこした愛想の良い子である。袋から買って来たシャンプーを取り出して
「やっとシャンプー買いました。今日から頭を洗えます」と言ったら「それはよかったです」と言って彼女は笑った。「そういえばボーンとは普段話したりしますか?」と唐突に核心に触れた質問をしたら「ほとんど話さないです。ええと、言葉が違うので...」と言った。やっぱり話してないんだ!あれだ、たまたま廊下ですれ違ったらお互いクラスが違う高校生みたいにスッと避け合うんだろ?バッドコミュニケーションだ!
そういえばあれだな、僕はこれからシャワーを浴びるわけだけど、その間にリーさんがシャワーを浴びようと思って準備をして、いざバスルームに言ったら使えませんでしたーみたいになったら申し訳ないな。と思って。
「バスルームに行きますって中国語でなんていいますか?」
「バス...ルーム?」
「シャワーを浴びます、って」
「ああー"洗澡"」
「xi zao??」
「(笑)いや、洗澡、です。」
「xi zao.」
「うん、まあそんなかんじです」
と言いながらリーはめっちゃ笑っている。相当下手なんだろう。
中国語は前から下手くそだ。音の高低で意味がまるで変わるし、日本語にない発音が多すぎるのだ。それでも「恋する惑星」で出てくる広東語とかめっちゃかっこいいし、「SPEC」で加瀬亮が操る広東語もすごいかっこいいので憧れはある。
「どうして、中国語、話せたいですか」
「会社に中国の人が多くて、話してみたくなったからです。」
と答えると納得したような顔だった。
それで「おやすみなさい」と言ってお互い部屋に戻っていった。リーはこちらがゆっくり話せば十分日本語のコミュニケーションが取れる感じだった。たいしたものだ。
それにしても、ボーンとリーがいつからこのシェアハウスで生活していたのかはわからないがお互いコミュニケーションが取れないというのは不便しないのだろうか。
僕が日本語と、辛うじて微弱な英語が話せるのでシェアハウスのオーナーが是非入ってくれ、ここに入ってくれたらこっちも助かると言っていたのも頷ける。
二人とも善良な市民のようなので、もう少し様子を見ながら仲良くなりたいな、と思う次第だ。ちなみに僕は今だに「洗澡」が発音できません。
おしまい