おすすめの3つの手帳
前回(「女のいない男たち」 - 襟を立てた少年)では村上春樹のファンに怯える醜態を見せてしまったけれど、それに通じる所から話し始めようと思う。
趣味的な物にかんして「好きだ」って公言するのは勇気のいる行為だ。
特に「ジブリ」「ガンダム」「車」「村上春樹」「西尾維新」とか、ヤバいと思う。ちょっと油断するともっと詳しい人が糾弾してくるからである。「そんなに詳しくもないくせに偉そうに!」だなんて言われてしまうのである。
僕が臆病なのかもしれないが、それならそれで良い。僕にだって一つくらい声を大にして「好きだ」といえる趣味があるのだ。それは手帖だ。
手帖の話をするとき、親しくない人は興味深そうに身を乗り出し、友達は「またその話か」と顔を引きつらせ、親しい人なんかはもうブラウザを閉じているかもしれない。
手帖とはいっても種類は様々だが、僕が好きなのは、写真やマスキングテープを貼付けたり、旅行先のチケットを無造作に貼っていく感じの、言うなれば「サブカル的な」手帖である。僕はああいうのが好きでたまらないのだ。
「好きというからには詳しいのだろうな」と刃物を突きつけられても僕は平然と頷くことが出来るだろう。いや、それはないな。刃物を突きつけられたら少しくらい動揺するかもしれない。
「あれこれ貼ったりカスタマイズしたりして、自分だけの手帖にしていく。手帖と成長していく!」みたいなうたい文句は僕だってちょっと恥ずかしいけれど、手帖は確かに日々肌身離さず持ち歩くことで共に成長していくものだし、手帖の汚れや傷さえも思い出になったりして、少しずつ「自分だけのもの」になって行く感じがたまらない。
こういう手帖の中で代表的なものは3つある。
「ほぼ日手帳」と「Traveler's notebook」そして「Moleskine」である。
ほぼ日手帳は糸井重里が皆と開発した1日1ページ型の手帖である。数えきれないカバーからお気に入りのものを選び、1日1ページ好きなことを書いたり、貼付けたりする。使っているだけで同ユーザーから話しかけられまくる唯一の手帖だ。
カフェでほぼ日手帳の良さについて後輩に熱弁していたら隣に座っていた男性が「僕も使っています!」と突然話しかけてくれて、いやぁあれは良かったなぁ。
そういうことが度々ある。先週も同じ授業だった知らない女の子に「ほぼ日使ってるんですね!私もです!」と話しかけられた。ほぼ日手帖ユーザーはほぼ日手帳を使っていることに誇りを持っていて、そして同じ物を持っている人に話しかけずにはいられない。電車の向かいの席。病院の待合室。どこだっていい。きっかけなんかなくなって「同じなんです!」と話しかけられる。そして見せ合いっこしたりする。
こんな豊かな手帖は、世界中探したってちょっとない。
Traveler's notebookはほぼ日手帳と双璧を成す手帖で、革カバーを購入した後中身を自分で選んでカスタマイズするのだ。スケジュールブック・画用紙帳・罫線ノートブック・・・種類も豊富で、自分の生活スタイルに合わせて買い足していくのもいい。名前の通り本当に旅が似合う手帖で、革が経年変化や傷によってどんどん味がでてくる。
中身が同じで外側を選べるほぼ日手帳と、
外側が同じで中身を選べるTraveler's notebookは本当に対照的な存在だと思う。
Traveler's notebookは昔からすごく気になっていてこないだ弾みで買っちゃった。感想としては最高です。これからどうやってカスタマイズしていこう。
Moleskineについてはまた別の機会にたっぷり話したいと思っているけれど、ほぼ日手帳ともTraveler's notebookとも違う、歴史あるストイックな手帖である。
ピカソやゴッホが使っていたなんて言うから「ほんとにぃ?」という感じだったが、映画「アメリ」でも主人公アメリがモレスキンを使っていて感動してしまった。映画に良く登場することから持っているだけで素敵な感じがする。中は至って普通の手帖なんだけど、非常に堅牢で壊れにくく、ページも色落ちせず、汚れが目立ちにくいクリーム色をしている。
手帖が好きっていうのは趣味としては不思議な立ち位置といえるかもしれない。つまり、テニスが好きなら毎日テニスをするだろうが、手帖は生活のツールであって、趣味としての昇華が理解されにくい面がある。
趣味として何をしているのかと言えば、アレンジしたり、綺麗に使ったりして楽しんでいるのである。そして同時に「もっと手帖を素敵にする方法はないか」「他にもっと良い手帖があるのでは」「どのペンがこの手帖にふさわしいだろう」というようなことを日々考え続けている。これが楽しい。
ほぼ日手帳はかれこれ5年使っているし、現在日記はモレスキンに4年に渡って書き続けている。これからTraveler's notebookとの日々が始まると思うとうずうずしてしまう。