覆水盆に返らずの意味
覆水盆に返らず。
復縁を求めた元妻への返答として、元夫はお盆に注がれた水を庭に撒いた。
つまり、一度お盆から落ちた水は二度と戻ることがないという意味だ。これが覆水盆に返らずの元々の意味になる。
なぜ落ちた水は盆に戻らないのか。重力が一定方向に働いているからである。重力は必ず(我々が認識する上での)下に向かって働いているので、それが急に逆流したり、あるいは水が途中で停止するようなことは起きない。
重力とは何か。重力とはある意味時間のことである。
それは一定方向にのみ進み、決して逆流しない。
盆から落ちた水は時間の法則に従って正しい方向に導かれる。
つまり取り返しがつかない。
取り返しがつかないのが人生だと思う。別に、重大なことではなくたって、さっきのあくびも、昨日食べた晩御飯も、さっき友達に言い放った言葉も、取り返しがつかない。取り返しがつかないことばかりだ。
だから人生にはもともと取り返しがつかないってことがあらかじめ含まれているので、取り返しがつかないと嘆くのではなく、それもまた人生の妙味だと思って味わうほかない。