孤独の愉しみ方 森の生活者ソローの叡智
素晴らしきAmazonライフ。
僕はPrime Musicでバッハの「ゴルドベルク変奏曲」を聴きながら、Kindleでヘンリーデイビッドソローの「森の生活」を読んでいた。
これすごい。まるで自分が意味深な哲学者のような気持ちになる。
なんか漠然と、今日から自分の素敵なシンプルライフが始まるような予感がしてくるような良書。
- 作者: ヘンリー・ディヴィッドソロー,Henry David Thoreau,服部千佳子
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2010/09/01
- メディア: 単行本
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といっても僕が読んでるのは「孤独の愉しみ方」という、いわばソローの森の生活から名言を抜粋したまとめサイトのような本だ。いいところを抜粋してわかりやすく解説してくれていて読みやすい。
あまりにもネット界隈のミニマリストが揃って「森の生活」を読んでいるので(じゃあ森に住めばいいのに....とか一瞬思った)ちょっと気になって原作のほうを読んでみたのだけれど結構内容が退屈に感じられてしまって上巻で放り投げてしまった。
- 作者: H.D.ソロー,Henry David Thoreau,飯田実
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1995/09/18
- メディア: 文庫
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自分の森の生活について語り続けてくれればいいものを、今の国の体制の批判とかが始まってしまってそのたびに僕は「あーまたお説教が始まった」「はやく終わらないかな」と校長の話をきく朝礼の中学生のような気持ちでページをめくっていた苦い記憶が蘇るー。まあミニマリストは喜んで読んでいるわけで、要は僕にこれを楽しむ用意ができていないだけなのだけれど...。
しかし!この「森の生活」のエッセンスを抽出してわかりやすく咀嚼してくれた「孤独の愉しみ方」はすごく読みやすく、そして原文を抜粋して紹介してくれているので面白かった。
「孤独の愉しみ方」名言抜粋
今回はソローの「森の生活」の中で僕が響いた言葉を紹介したい。
(kindle上で気になった文をなぞっておくとラインマーカー機能がl起動して、後になってからラインマーカーした個所を全部見ることが出来るのだ。それはさしずめ読書をしながらまとめたノートブックのようだ。)
純粋さは努力から生まれる
努力からは知恵と純真が、怠惰からは無知と色欲が生まれる。
すでに春が来ているのに、僕たちはまだ冬をさまよっている。すがすがしい春の朝には、人間の罪はすべて許されるのだ。
投げ込まれた石を投げ返す。仕事の多くは、実はこんな石の投げ合いである。
ソローはちょっと偏りすぎているのでたまに「えっw」と思ってしまうことも多いのだけれど、この言葉は「うーんそうかも」とちょっと思ってしまった。
僕がデザインを修正して、クライアントが修正依頼を持ってくる。それを修正して出す。すると、「こんなの予算に合わない」と言ってくる。僕はまた修正して代案を出す。すると直前になってクライアントが「やっぱりこれも追加してくれ」と言い出す。「追加するのはいいけどデータをおくれ」と言うと「データは本社にあるから時間がかかる」という。じゃあ無理だというとお金を払わないと言い出す。
そういうやり取りは仕事をするうえでよくあることなので、あるいはデザイナーの宿命なのかもしれないけれど、「あー石を投げ込まれたな」と思うことは確かにあるわけで。
湖は人生よりはるかに美しく、人間性よりはるかに透明である。
ときおり、多くの職人や商店主が、まるで脚は立ったり歩いたりするためではなく、座るためにあるのだと言わんばかりに、午前中ばかりか午後もずっと足を組んで座っているのを思い起こすたび、よくまあとうの昔に自殺してしまわなかったものだと感心する。
これは今の会社員に当てはまる言葉でもあるわけだけど、ソローは会社員に対する煽りがすごい。古典のイケダハヤトみたいな感じ。森の生活を営みながら「まだ東京で消耗してるの?」みたいな。
わりと腹立つんだけど、この言葉は「そうなんですよ~」とちょっとこぼしそうになった。だからどうすりゃええねん!と思うんだけど、ソローは平気な顔をして「森に入って自分で家を建ててごらん。僕たちには生まれつきその能力が備わっているんだ」とか言い出す。
あと数回読み返したいなと思う良書だった。ただ、ソロー自身批判ばかりで、現代人に対して「もっとこうしてみたら?」みたいなことはあんまり言ってくれないんだよね。
「社会のしがらみで汗かくなんてばからしいよ。僕なんて朝はリスの足音で目覚めるのさ。」みたいなことばかり書くんだ。「まあ森で暮らしてる僕はこんなに素敵だけどね」みたいな煽りが多い。
ただ、「いいな」と思う。
具体的な解決策が提示されていなくても、ウォールデン湖のほとりで暮らす一人の人間になった気持ちで、バッハでも聴きながら読んだら社会にもまれている僕たちもちょっとは気分がよくなるかもしれない。
おしまい