鈴木ユートピア

31歳、写真、キャンプ、バイク、旅

あなたの宝物はなんですか? 

 「わたしの宝物」という題材で文章を書いたら、結構いろいろ自由に書けるのではないかと思い立って、仕事の運転中に自分にとっての宝物について思いを巡らせていた。
 


 ところが! 一つも思い浮かばなかった。

 

これには驚いた。


 普段使っているものを考えてみる。

 

手帳。これは消耗品なのでどんどん買い替えてしまう。スマホ。これも同様。スパンが手帳より長いだけで、買い替え前提だから愛着という感じではない。靴。消耗品。カメラ。消耗品。筆記用具。消耗品。
 消耗品ばかりで、「こいつもいつかは壊れる運命よ」みたいな気分で時間を共に過ごしている物ばかりだ。
 

 


 逆に、他の人にこの質問をぶつけたときに、どういう答えが返ってくるかを想像してみる。父から譲ってもらった時計とか? あるいは定期的に磨いている革靴とか? 子供が描いてくれた似顔絵とか? 自分はそういう情緒が欠損しているのではないかと不安になる。
 宝物の定義を考えてみると、「火事があって緊急で家を出なくちゃいけない時に、通帳判子お財布みたいな金目のもの以外に、思わず手に取ってしまうもの」と言ってみる。そうするとその人にとっての宝物が浮き彫りになってくるのではないか。
 

 


 バイク…。バイクだろうか。

 

数えきれない旅の相棒。免許を取ってすぐ買って、それからずっと乗っている大事な乗り物。ただ、これを宝物とすぐさま言えるかというと、本当にそれほどバイクを愛していますか? と自問するとやはり少し心もとない。たとえば、ちょうど今欲しいバイクを目の前に差し出されて、「今ならこれと交換してあげるけど?」と言われたらすぐさま乗り換えてしまうと思う。結局のところ、バイク乗りの中でも、僕は「バイクに乗ってどこかへ行く」ことが好きなのであって、バイクという装置が好きなわけではないのだ。

 


 
 宝物、ないなぁ….。何気なく机の引き出しを開けてみる。充電ケーブルやメガネケース、本の栞が無造作に突っ込まれている。全然思い当たらない。少し焦る。昔は自転車にハマっていたので、自分の自転車が宝物だった。一度サイクリングをして帰ってきたら必ず洗っていた。車体だけじゃなくて、タイヤとか、ホイール一本一本まで、ゴシゴシ拭いて、ワックスがけまでしていた。でもその自転車の趣味もやめてしまったわけで。
 

 


 気に入ってる物はいくらでもあげることができる。測量野帳。マムートのリュック。カルフのスニーカー。SEIKOの腕時計。マルマンのスケッチブック。シュウカワグチのスーツ。
 

 

 


 ただ、宝物とは呼べない。つまりは、気に入っている物の上位である超気に入っている物と宝物が僕の中で同義ではない。宝物はもっと、人の記憶や情緒と深く結びついている。身体性とも結びついているかもしれない。どうしても捨てられないもの。「それ買った値段の倍で譲ってよ」と言われても譲れないもの。

 


 
 そういうのが、ないんだなぁ。参ったなぁ。

あるいは、あまりにも身近なので、今パッと思いつかないだけかもしれない。っていうか、そうだったらいいのにね。また思いついたら書いてみようと思う。あなたの宝物はなんですか?