鈴木ユートピア

31歳、写真、キャンプ、バイク、旅

「小説家になろう」のランキング1位から8位が全部異世界転生もので泣いちゃった

 

 バイクの免許を取って初めてバイクを購入したのがちょうど今頃だから、ライダーになって1年が経った。去年唐突に「そうだ、バイクの免許を取ろう」と思ったのだ。本当に、バイクの名前なんてハーレーくらいしか知らないくらいの知識で、ただ漠然と「バイクってかっこいいよね...」くらいの軽率さで近隣の教習所を検索したのが昨日のことのようだ。

 

 今は去年に比べればバイクの知識は増えた。知識が増えたって言ってもバイクの種類とか、名前が言えるようになった程度で、正直バイクがどういう仕組みで動いているのかわからないし、メンテナンスもできないしパンク修理もできない。できないんだけど、ちょっとその辺をバイクが通った時に「おっテネレじゃん」とか「やっぱR1250はでけえなぁ」とか、ちょっと知ってる風のセリフが出てくるようになっただけだ。面白いことに、何か趣味を得ると、それに関する知識を自然と吸収するようになるみたいだ。

 

 そう考えると知識があった方が世界は面白い。と思う。旅行に出かけたら歴史や文化を知っていたらより面白くなるだろうし、魚に関する知識が皆無で水族館に行くよりも色々知ってる方が楽しいだろう。普段通りの外に出かけた時に、花の名前が言えたり、横切ったバイクのスペックが分かったり、今のお天気が季節的にどういう原理でそうなってるのかとか、知っていたらどんどん世界って面白くなるだろうなと思った。

 

 ちょっと話は変わって、小説を書いてみたくなって「小説家になろう」っていうサイトを覗きに言ったの。自分で小説を書いたらそこに投稿してみんなに見てもらえるのね。そうしたら人気ランキングの1位から8位までが全部ファンタジーものか異世界転生ものでびっくりしちゃった。本当にびっくりしたんだ。

 それは最近の創作者の卵は想像力が〜とか現実を見る目が〜とかそういう批判精神ではないんだけど、やっぱり小説って結局は自分の体験したことしか書けないんだなっていう壁を感じた。

 

 今回の直木賞受賞作家もそうだけど、学生で小説家デビューした方の作品はやっぱり主人公は学生なのだ。舞台は学校でさ。やっぱり学生が書いた小説の主人公がノルウェイの音楽家だったり、離婚調停中の消防士だったりしたら天才というよりは鬼才だ。村上春樹の作品の主人公はサラリーマンではないし、吉本ばななの主人公は恋する乙女だし、横山秀夫の主人公は新聞記者で、伊坂幸太郎の主人公はエンジニアなのだ。そうでない作品ももちろんあるだろうけど。

 

いや、だから何っていう話なんだけど、要は良い悪いの話とは全然違う所で、人生経験が浅い人間の場合、特定の職業(記者やエンジニア)や特殊な状況(殺人や複雑な人間関係)をまだ経験していない上に、さらに学生だったりすれば社会的な常識=いわゆるオトナの世界がどういうシステムで動いているのかもわからないから、学園青春を書かない限りは絶対に異世界転生するしかなくなる、という話だ。◯◯っていう町にはドラゴンとゴブリンがいて、王様が勇者を探していて〜みたいな、ゲームで得た世界観やコンテクストに自分の価値観をインストールして物語を紡ぐんだろうな。

 

 そういうことを言われて、「チクショウ、じゃあもっと現実的な物語を書くぜ!」って思って、ネットで知識を一生懸命揃えて小説を書いたりすればリアルな物語ができるんだろうか。例えば情熱大陸とかでそれを知った気になって、書くのだろうか。それも何やら危ない感じがする。プロの人が「こんなんじゃないもん!」って声をあげそうだ。最近はさ、そういう社会だから。

 

 一方で、やっぱりさっきも書いたけど、自分が明らかに体験してないのに本当に体験してきたみたいに書いちゃう小説家ってやばいと思う。「一瞬の風になれ」も「風が強く吹いている」も男子陸上部の青春物語だけど、書いてるのは女性作家だったし、ピアノのコンクールの物語を書いた恩田陸はアルトサックスやってたけどピアノはやってなかったはずだ。やっぱり綿密な取材の賜物なんだろうか。そうなんだろうなぁ。小説家も家にこもってずっと書いてるわけじゃないんだろうな。「羊と鋼の森」の宮下奈都も図書館で一度調べ物始めたらずーっと調べ続けちゃうって書いてたもんな。

 

何が言いたかったかというと、前半の方は知見が増えると視野の解像度が上がるよねっていう話で、後半は自分が体験したことしか結局は書けないよね、っていう話!

 

 

おしまい