鈴木ユートピア

31歳、写真、キャンプ、バイク、旅

ビジネス書との付き合い方

 

 

今週のお題「雨の日の過ごし方」

 

 晴耕雨読という言葉があるように、梅雨は読書のシーズンだと思う。

(そのわりに夏になると書店が夏の文庫フェアを始めるもんだから、"夏は外でアクティビティをした方がいいのでは!"と思ってしまう。梅雨の読書フェアをぜひ開催してほしい)

 世の中の人を「本を読む人」と「本を読まない人」に分けたときに、僕は「本を読む人」だと思う。こういう回りくどい言い方をするのは、「僕けっこう本読むんだけど」という言い方が非常にリスキーだからだ。このご時世、どんな足元の掬われ方をするか分かったものではない。「えっ読書家を気取ってるのに『銃・病原菌・鉄』も読んでないの?」なんて言われたら怖くて口をきけなくなってしまう。だいたい、「本を読む人」のレンジも奥が深い。本を読む人は本当にすごい量を貪るように読むので、そういう人が存在することを知っている僕はおいそれと読書家を名乗るような気にはなれないのだ。

 

「どんな本を読むんですか」という台詞は「読書が好きで〜」みたいなことを口走ってしまったときに必ずぶつけられる質問で、こういう質問はバイクに詳しくない人に「なんていうバイク乗ってるんですか」と訊かれたときによく似ている。それに対して真摯に「RnineT乗ってます」とか「2ダボに乗ってます。CBR250RRのことですけど」なんて返しても「へぇ。すみません詳しくなくて......」みたいな返事が返ってくるのが関の山だ。なんで訊いたんだよ。

 

それで、僕は「どんな本を読むんですか」と訊かれたら「吉本ばななとか...... 」と答えるようにしている。とりあえずそれで大丈夫だ。知識人ぶってる感じがしないし、吉本ばななだったら誰でも知っているから会話の流れとしてもなんとかなる可能性がある。(もちろんなんとかならないこともある。)

ところで僕は毎日吉本ばななの本を読みまくっているわけではない。たまに読み返すくらいだ。僕がここ数年一番読んでいるのはnewspicks系の「未来とかビジネスとかイノベーションとかの内容が載ってるビジネス書」だ。

 

 別に起業してイノベーションを起こして世界を変えることに密かに準備をしているわけではなくて、単純に最近の自分の趣向として、こういう本を読んでいる時が一番ワクワクするだけだ。読むときの姿勢としてはミステリー好きがミステリー小説を読んでいるのとなんら変わりはない。彼らも人を殺す為にミステリーを読んでいるわけではないのだから。

 

 こういう本を読むきっかけになったのはリンダ・グラットンの『WORKS SHIFT』で、これがあんまりにも面白くて同著の『LIFE SHIFT』を読んだらすごい、未来がやってくるぞ!」と興奮が収まらなくなってしまった。それから落合陽一とか安宅和人とか宇野常寛とか、そういった方向性の書籍を読むようになって、別にそれで賢くはなっていないのだけれど、「この先こんな世の中になるんだろうなあ」という漠然とした見通しは立つようになった。

 

 今は山口周の「ニュータイプの時代」を読んでいる。本の内容としては「今みたいな働き方・働くことへの考え方は古いぜ!」っていうことなんだけど、「じゃあどうすればいいの」って感じだ。ビジネス書は様々な予見や知見を僕たちに与えてくれるけれど、具体的な方法は示してくれない。確かにこれらの本が示す通り、人生100年時代がやってきて、労働者の寿命が企業寿命をはるかに越えるだろうし、社会のVACA化も手伝って複数のキャリアを縦断的に渡る必要が出てくるし、問題解決型ではなく問題定義型の労働者が世界を変えるのだろうということもわかる。

 

 でもだからといって僕らはどうすればいいのだろう。いくら新しい世界がやってくるといっても、明日は右折禁止で切符を切られた時の罰金を払いに郵便局に行かないといけないし、来週には自賠責保険の更新支払いが待っているのだ。

 ビジネス書を読むのは胸おどる作業だが、たまに「でもだからどうした」という漠然とした苛立ちに似た感情に辿り着く。こんな本を読む時間があったら、腹筋をバキバキにする為に筋トレをしたり、気立ての良いできれば可愛い女の子を見つける為に合コンに通ったりする方がよっぽど有意義なのではないか。

 

 

いつかこういうビジネス書の多読も役に立つのだろうか、と思いつつ、何かに役立てる為に本を読んでいるわけではなくて、まずは楽しむ為に読んでいるわけだから、と自分に言い聞かせながら、とにかく僕は本を読んでいる。

 

おしまい

 

 

 

 

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
 

 

 

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

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遅いインターネット (NewsPicks Book)

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ニュータイプの時代

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